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「きゃっ……!」
「お勤めご苦労様、片羽女~。喉乾いたでしょ? 埃を絞った汚水だけど、それ飲んでもいいよぉ」
「あんたのせいでアタラ様まで折檻されたって本当?」
「うちらの楽徒の足まで引っ張らないでよ、疫病神」
物見の塔の二階から桶をひっくり返した三人が、ずぶ濡れになったオトを見下ろして嘲笑した。この様子だと、オトが多くの夢喰を祓ったことは伏せられているらしい。
疲労困憊の精神とすでに底を尽きた体力へ、さらなる悪意の追い打ち。歯向かう気力もない。それに……。
(私がアタラを巻き込んだのは、本当だもの……)
壁に手をついて再び歩き出す。頭上から「つまんないヤツ」と吐き捨てられた。
ずぶ濡れにされた身なりを整えるため、東の居住区へ向かう。果てなく感じる廊下を気力だけで歩き続けた先に、悲痛な嘆願が響き渡った。
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