献上

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「信徒でもない大陸人を島に入れるなんて……まさか、船渡しを許可されたのですか!?」  一人の雛鳥が喧騒の中で声を上げた。  カージュの連絡船は片道運航。小島から船渡しされた者しか、小島には渡れない。双頭の竜を祀る大陸人など言語道断。  雲雀(ヒバリ)の面はトン、と足踏み一つで静けさを取り戻し、改めて一同を見渡す。 「無論、こちらから船は出しません。しかし船を持つのは我々だけではない。西の港から大陸の蒸気船を回してくるそうです。大砲を大量に積んだ新型船を」  つまり、脅しだ。船着場の近くには先祖代々続く由緒正しき信者の集落があるが、高齢化が著しく無力に等しい。歌い奏でることしか知らぬ雛鳥を外の悪意から守ってきたのは、ひとえに島民の信仰心だ。  ――カージュは神鳥(かんどり)様の巣。只人(ただびと)が足を踏み入ることは許されぬ。  この教えに準じてきた友好国が手のひらを返すように船を寄せるのは、どうにも強引に思えた。
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