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「いや……出して、出してください! お願いだから、もう、許してっ……!」
硬く閉ざされた扉をどれだけ叩いても、何の音も聞こえない。床に額をつけて絶望に啜り泣くオトの襟から金の指輪が零れた。それは仄暗い社殿の中でも鮮明に輝き、あの約束を思い起こさせる。
――会いに行く、必ず。
「っ、う、うぅっ……!」
首元で揺れる小さな指輪を見て、無音の嗚咽が大きくなった。
期待しないと決めたのに。望んでも苦しいだけなのに。
だけど、もし叶うなら――。
「領事様じゃなくて、あなたが来てくれたらよかったのに……」
もしそんな奇跡が起きたら、この理不尽な扉を開けて、外へ連れ出してもらえたのだろうか。
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