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夜、来たる
夜の帳が下り、雛鳥たちは雪洞が灯った本殿へ集められた。
雅な舞台装束の隙間を縫いながら、サヨはオトを探した。部屋で別れて以来、姿を見ていない。てっきりリラを修理するのに集落の工房へ行ったと思っていたが、職人たちは来ていないと言うし。
(もうすぐ領事様が来てしまうのに……。オト姉様、どこにいるの……!?)
女性用の長袴や腰から末広がった裳を潜り抜ける幼鳥を邪魔そうに睨む者もいたが、今は皆、献上のことで頭がいっぱいだ。
船の明かりが鳥居の外に見えたと見張り役が言っていた。間もなく回廊を抜けて領事が姿を現すだろう。そして楽徒ごとに夢喰採りの演目を披露し、献上が選定される。その場に姿を見せないのは、クレセンティアとリュクスの双方に背を向けることに他ならない。オトの立場はどんどん悪くなってしまう。
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