夜、来たる

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「サヨ! オトは見つかったか!?」  血相を変えたアタラに呼び止められ、俯いていた顔を上げた。  彼もまた舞台に立つため、普段とは違う上質な絹の装束を着ていた。光沢のある花鳥の丸紋が白の生地に薄っすらと浮かび上がっている。  オトの身を案じながらも、演目を疎かにはできない。自我と立場に板挟みになった苦悶の表情を浮かべるアタラに、サヨは力なく首を振った。 「いえ、集落にも来ていないって……」 「そんな……」 「も、もう一度探してきます!」  再びカージュの中を探しに行こうとした羽耳を、鐘楼の音が揺さぶった。ついにその時が来てしまったのだ。
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