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行灯を持った告鳥三羽衆に連なってまず現れたのは、クレセンティアの島主、ツキシマ・ミツル。三日月の家門が入った黒い羽織を着流しに合わせ、下駄を鳴らしながら堂々と歩く。
天寿を全うした先代から島主を引き継いでまだ二年。年齢は三十歳になったばかり。整髪料を付けていない散切りの黒髪が夜風に揺れた。
島の掟に厳しかった先代と違い、彼は新時代に寛容と聞く。垂れた目元は柔和に見えるが、人の良さそうな笑みも含めて腹の底を探らせない壁を感じる。
そしてついに、その人が姿を現した。
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