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「これが夢喰採りか。なるほど、興味深い」
カージュへ踏み入って初めて声を発した領事に、演目を終えた雛鳥たちの敏い羽耳がぴくりと反応する。明朗でよく澄んだその声に、誰もが年若い青年を思い浮かべた。
領事は一段高い貴賓席から立ち上がると、楽徒ごとに整列した雛鳥を見渡す。選別されている居心地の悪さを感じて、誰ひとり目を合わせようとしない。
「芸事で悪魔祓いをする民族は大陸にも多いが、君たちの歌は群を抜いて素晴らしい。前任の領事も褒め称えていたよ。カージュの文化は、リュクスが国を上げて保護するに値すると」
サヨは集団の端から領事をこっそり見つめる。そして一人一人を確実に捉える目の動きを見て、気づいた。
(まるで、誰かを探しているみたい……)
不意に鳥の骸骨がこちらを向いた。バチッと目が合って、その疑念は確信に変わる。献上を選ぶだけなら、幼鳥のため舞台に上がっていないサヨをわざわざ見る必要がないからだ。
「時に告鳥殿。雛鳥が一羽足りないようだが」
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