小鳥を探して

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「なら君にしようか」 「は……?」 「君の歌声は確かに素晴らしかった。大陸中を、いや、世界中を探し回っても君以上の歌い手を見つけることは困難だろう。優秀な者を献上に選ぶなら、真っ先に君を連れ去るべきだ」 「なっ……! 玲瓏(れいろう)の歌姫たるこのあたくしが、なぜ大陸人などのために歌わなければならないのです!」 「リュクスは長らく数多の国を支配する側にいた。君が毛嫌いする大陸人は、気が強い者を組み敷くことに何よりそそられる性分でね。そう言う意味でも、君は慰み者にぴったりだ」 「っ……!」 「だが俺は、そんなものを探しに来たんじゃない」  身のほど知らずの籠の鳥を食らうような、息もできないほどの凄みだった。圧倒されたメルヴィは血の気が引いてふらりと後退する。その弱々しい様子に、わざとらしい脅しをかけていた領事はすっかり興味を失ったようだ。  彼は歌姫に背を向けると、回廊が巡る本殿をぐるりと見渡す。そして視界の隅にネズミを捉えた。ネズミはその場で二周回り、本殿の奥へと走り去っていく。骨に隠された相貌に小さく笑みを浮かべ、その後を追った。
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