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約束
ちょこまかと走り回るネズミを追って、領事は迷わず歩を進める。現れたのは離れのような小さな社殿。
案内を終えたネズミがコートの肩へ器用に上り、前歯をくわっと見せて「チチチッ」と小さく鳴く。
「この骨? 怒らせるためのパフォーマンスだ。その方が相手の本音がわかりやすい」
中折れ帽を脱いで悪趣味な骨を外し、社殿の隅へ放る。もう必要のないものだ。
「おかげでじっくり見ることができたよ、この美しくて惨い鳥籠を」
そう言って扉に手をかけた時。何者かが駆けて来る足音を察知して、ネズミがそそくさとコートのポケットに隠れた。
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