約束

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「領事殿!」  息を上げて走って来たのはアタラだった。ミツルと告鳥(つげどり)が対峙する最中(さなか)、人目を盗んで追いかけて来たのだ。 「そこはセレニティ様の恩寵(おんちょう)を集めた特別な場所。これ以上カージュで勝手をされては困る」  一歳にならないうちからカージュへ捧げられ、生まれてからのほとんどを鳥籠の中で過ごしてきた。アタラの根っこには、神鳥に対する深い忠誠心がある。  そんな模範的な優等生を一瞥(いちべつ)してもなお、領事は扉から手を離さない。 「君はこの中に何があるのか知っているのか?」  淡い金糸の間から、冷たく燃える青の瞳が突き刺さる。アタラの背筋を駆け抜けた悪寒は、間違いなく殺気だ。 「……何もない。使われる場合は扉に札をかけるようになっている。その中は無人だ」 「よかった。知っていて止めているのなら、君を八つ裂きにするところだった」 「それは、どういう……」  答える代わりに、扉が勢いよく開け放たれた。
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