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「鳥籠から出す気もないくせに、中途半端な優しさで飼い殺すのは一番非道だ。狡い男だな、君は」
「っ……!」
その言葉に、浅沓が酷く重くなった。
蒸気船を見て瞳を輝かせたオトの横顔を知っている。ずっと、誰より近くで見てきた。守っていた、つもりだった。
打ちひしがれてその場から動けなくなったアタラを残し、領事は来た道を辿って本殿へと戻った。
素顔を見せた領事と、死んだようにぴくりとも動かないオト。雛鳥たちは囀ることも忘れて息を飲む。
「島主殿、献上選びは終わりだ。本島へ戻ろう」
「ああ」
感情が見えない鳥面の奥から無言で睨みつける告鳥の横を通り過ぎ、二人は船着き場へ向かう回廊を歩いた。
誰も言葉を発せられない異様な空気の中、小さな影が二人を追う。
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