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艶やかに熱く
誰かに頬を撫でられ、オトの意識が浮上する。
鉛のように重かった身体は、温かくて柔らかいものに包まれていた。羽毛布団だ。くたくたになった煎餅のような寝具しか知らないせいで、極楽浄土と勘違いしそうになる。
見上げた天井は白く、壁も同様に漆喰の白。大きな上げ下げ窓の外には澄んだ夜空が広がっていたが、カージュの自室とは比べ物にならないほど明るい。天井からつり下がった大きな多灯の燭台のおかげだろう。
見慣れぬ大陸様式の部屋を見渡すぼやけた視界に、金と青の美しいコントラストが映り込んだ。
「おはよう、俺の小鳥」
雛鳥は耳が良い。それに一度聞いた音や声は忘れない。片羽のオトでさえ常人よりも遥かに優れた聴力を持つ。
ツツジの香りと共に記憶に刻まれた声を聞いて、一気に視界が弾けた。
「ッ!?」
頬を撫でる異国の美貌と一瞬だけ見つめ合う。驚いて飛び起きようとするが、肩を軽く押されてあっけなく枕へ舞い戻った。
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