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指輪から離れた手で急に羽耳の付け根を撫でられ、悲鳴が上がる。そこは猫の尻尾のように繊細なのだ。無遠慮に触られるとゾワゾワするし、優しくされてもゾクゾクする。とにかく、簡単に他人に触らせるような場所じゃない。それになぜだろう、絶世の美男の息遣いが不穏だ。
「ハァハァ……なぁ、もういいよな?」
「な、何が……? あぅッ」
「我慢の限界なんだ。顔色も良いし、問題ないよな? なっ!?」
震える羽耳に熱い吐息が当たる。いったい何の許可を求められているのだろう。
オトに覆い被さる挙動に合わせて、寝具の木枠が軋んだ音を立てる。敏感な羽耳で拾うその全てが生々しく感じて、早まる鼓動で内側から破裂しそう。
「待って」と、白い襯衣の胸元を押し返す。だが弱々しい手を取られ、そのまま枕元へ縫いつけられてしまった。
興奮で煮え滾った青の宝石に見つめられ、拒絶の言葉を焼き尽くされる。メルヴィの憎悪の視線とは全く違うが、どうしてか拒めない。
「酷いことはしない。ただ身を任せてくれたらいい」
「あ……」
されるがまま、という言葉が一番しっくりくる。
悩まし気に眉を寄せた視界の隅で、彼の手が下へと動いた。その一挙一動に反応して脈動する心臓。これ以上この美しい人を見ていたら自分が壊れてしまいそうで、ぎゅっと目を瞑る。
「では、さっそく……」
視覚が断たれると聴力が過敏になる。服が擦れる音に想像力が刺激されて、羽耳がうずいた。これでは逆効果じゃないか。
観念してうっすら目を開けると、そこには思いもよらない光景が広がっていた。
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