寸前、爆ぜる

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「耳介にあたる部分を羽が覆っているのか。頭皮と付け根の一体化も素晴らしいな。角質の層が見事だ。聴覚のメカニズムは人間と同じだろうが、雛鳥は総じて耳が良いと聞く。羽耳はセレニティの意匠を表す以外に特別な作用があるのか……? ふふふ、すごく興味深い」  オトの羞恥心と比例して、ノアは何だかとても楽しそうだ。初対面から変わった人だと思っていたが、ますますわけがわからない。 「み、醜いから、あまり見ないで……」 「静かに。余計な主観は考察の妨げになる」  消え入りそうな声で懇願するも、ぴしゃりと制された。余計な主観だなんて、随分な言い草だ。きゅっと眉を寄せて睨みつけるが、扇情的な表情になっていることにオトは全く気づいていない。羽耳に夢中のノアもだが。 「それに本当に醜いのは、君を醜いと言った者たちの心だ」  そう言って一枚の羽を摘まみ、内側に指を差し込んだ。  中を覗き込まれる視線を感じて、言葉にできない感覚が身体を駆け抜ける。ゾクゾクしたが、悪寒ではない。むしろ――熱い。 「んんっ……!」  熱を逃すように、思わず声が漏れた。
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