導き星

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「自由にって、錠や枷は必要ないのですか?」 「そんな趣味の悪い物を君につけるわけないだろう」 「で、でも、献上は二度と外に出ることはできないって……」  献上は大陸人のために歌い、弄ばれ、籠の中で死ぬ。誰が言いだしたのかはわからないが、全ての雛鳥がそう信じて疑わなかった。 「カージュではそんな風に言われているのか? 敵国の捕虜でもあるまいし。そんなことをしたら人権連盟から袋叩きにされるじゃないか」  戸惑うオトの手を取り、「それに」と続ける。 「せっかくカージュから連れ出したのに、総領事館(ここ)を新たな鳥籠にするつもりはない」  そう言って、屋上へ続く螺旋階段をゆっくりと上り始めた。  一段先を行く彼の後頭部を切なく見つめる。淡い間接照明を浴びてそれ以上に光り輝く金髪は、夜の海で船を導く星のようだと思った。思わず縋りついてしまいたくなるような鮮烈な輝きに、きゅうっと胸が締めつけられる。  やがて階段を上りきり、扉を開けた瞬間。夜の澄んだ風が二人の頬を叩いた。 「オト、見てみろ」  屋上の柵まで案内したノアが指さす。総領事館の麓に広がる夜の港には、橙色(オレンジ)の明かりが煌々と灯っていた。  初めて見るガス灯の美しい夜景を前に、黄金の瞳がうっとりと細まる。
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