歌が紡ぐはただ二人

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「私……ここにいても、いいんでしょうか……?」  涙で濡れた声で問う。  歌える自信なんてこれっぽちもない。もし取り返しのつかない迷惑をかけてしまったら――そう思うと、震えが止まらなかった。 「ここにいろ」と一言命じてくれたら簡単なのに。不安や戸惑いなど全部飲み込んで頷くことには慣れているから。  だがノアは、抱擁を緩めてこう言った。 「もう鳥籠は無い。どこで何をするかは自分で決めていいんだ」  羽耳に優しく押し当てられた唇が、祈るように囁く。 「俺は鳥籠を開けることはできたが、そこから飛び立つか戻るかを決められるのはオトだけだ。自分が生きる世界は、自分の意志でしか変えられない」  止まらない涙で濡れた目元を潮風が撫でた。顔に貼りつく茶髪を指で梳き、赤く熟れた頬を包んで額をくっつける。 「……でも、俺のそばにいることを選んでくれたら嬉しい」
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