海の原を越えて

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海の原を越えて

 頬が肩に当たるほどの距離でぎこちなく降りてきた白亜の階段が、もうすぐ終わる。潮風が羽耳を撫で上げたことで、菅笠を被っていないことを思い出した。 「あの、領事様」 「ノア」 「え?」 「名前、教えただろ?」 「あ……ノア様、その……羽耳、隠さないと……」 「なぜ? 雛鳥は外を自由に歩いてはいけないのか?」 「いえ……醜い片羽と歩くのを見られるのは、お嫌かと……」  どんどん尻すぼみとなった自虐に、ノアは足を止める。頭一つ分低い位置にある不安そうな小顔を見下ろすと、ふいっと視線を外された。 「オト、今からゲームをしよう」 「げぇむ?」 「君が自分を卑下した数の倍、俺が君を褒める」 「えっ」 「嫌なら胸を張って歩くことだ。何ならもっとくっついてもいいぞ?」 「あ、うぅ……」  すっかり真っ赤になってしまった雛鳥へ向ける緩み切った顔を、ハンナは呆れながら眺めた。初心な反応が可愛くて仕方ないのだろう。それにしても、酷い顔だ。
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