海の原を越えて

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「これが大陸の新型船だ」  披露されたのは、煙突を備えた黒塗りの蒸気船。近くではその全体を一目で捉えることは難しい。オトはあまりの雄大さに圧倒され、無防備に小さく口を開けて魅入ってしまった。 「近くで見ると、こんなに大きいんですね」 「大きいだけじゃない。真ん中に煙突があるだろう? あれは外輪を動かすための動力で、蒸気機関の一部だ」 「風がなくても航行できるということですか?」 「ああ、詳しいな」 「前に本で読んで、それで……あっ」  自然と隣のノアを見上げるも、朝の日差しを浴びて輝く美貌と目が合い、すぐ視線を逸らしてしまう。アタラの隣を歩く時の劣等感と似ているが、何か違うような気がする。いつもより鼓動が早い。憧れの船を前にした胸の高鳴りだろうか。頬がじんわりと赤らむ。 「船、好きなんだな」 「い、いえ……ほどほどです……」 「そのうちこれに乗って回遊でもしようか?」 「えっ!?」  思いがけない提案にまた顔を上げて、再びハッとうつむく。存外わかりやすい反応に、ノアは航行スケジュールへ無理にでもねじ込むと心に決めた。
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