雪もよいする

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雪もよいする

それはある寒い日の、昼休みのことだった。 雪が散らつく空の下、(あお)が言った。 「ねぇ、(すい)。あそこにいるのって子犬?」 蒼は目を丸くしながら、指を指した。 そこにいたのは、小さな段ボール箱に入った子犬。 何の種類なのかは分からなかったけど、なんとなく外国の種っぽいな、と思う。 「えっ、そうだよね。可愛いけど…」 学校の裏に、誰がこんなこと…。 「翠、動物アレルギーとかあったっけ?」 「いや、ないけど…」 まさか。 期待に満ち溢れたような顔をした蒼。 まさかね。 「よし!この子飼おうよ!2人でさ。まずクラスに連れて行って、皆にも見せて手伝ってもらおう!」 満面の笑みで、蒼は言った。 やっぱりそうか、と思う。 そりゃあ、飼うのは楽しそうだけど…。 「教室に連れてくのは流石にまずくない?大丈夫?」 「平気でしょ!それにまだ、この子生まれて数か月しか経ってないみたいだし。鳴き声も小さいし」 「うーん…」 やっぱり心配だなぁ。 「少しくらいならいいかもだけど、その後どうするか考えないとだよね…。」 「翠は心配性だなぁ。なるようになるでしょ。お父さんもよく言ってるよ。」 あっけらかんとした蒼に、自然と心が和らぐ。 「まぁ、そうかもね。楽しみ、だね」 「えっ、翠がのってくれた!珍しーい」 蒼は嬉しそうに笑った。 その小学生のような無邪気な仕草に、自分は心を洗われているのかもしれないな、と思う。 「じゃあ、早速教室連れてってみよー!」 やっぱり、蒼は凄い。 自分に無いものを、沢山教えてくれる。 「うん!」
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