窓付き封筒

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 窓付き封筒を手に入れた。これに住所を書けば、封筒についている小さな窓から、その家の中を覗くことができる。僕は迷わず、いつも通勤途中で見かけるあの子のマンションの住所を書いた。  どうして住所を知ってるかって? 野暮なことは聞くなよ。  僕は毎日、窓から彼女の姿を眺めた。  つらい日常も、彼女の一挙手一投足のかわいさで癒やされて、充実に繋がった。仕事も順調だ。  でも最近、彼女がこちらをチラチラ見てるような気がする。  はて? 向こうからは見ることはできないはずなんだけどな。窓の外に何かあるのかな。 「……あ、しまった」  僕は封筒を裏返した。つい癖でやらかしていた。  そのとき、玄関のチャイムが鳴った。 「すみません、警察のものですが」  律儀に、送り主の住所も書いちまっていた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加