陽彩

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「ひーちゃん」 嫌だ。そんな声で呼ぶな。 「ひーちゃんって」 まだ慣れてへんからこっち向いてよ、って。 ずるい。そんな情け無い声で言うなよ。 「…絶対、不細工とか言うなよ」 「うん」 仕方なく向き合う。見下ろすのが悲しくて、また涙が流れた。乱暴に拭う。 「ふふっ」 「…何だよ」 「んーん」 「どうせ不細工って思ってんだろ?」 「全然。ひーちゃんやなぁ、って」 心底嬉しそうに笑うと、ぎゅっと抱き付いてきた。 温かい、生きている。 顎を伝った涙が、律希の背中に落ちた。 「ごめんね」 嫌だ、絶対許してやらない。 「言えよ」 「ごめん」 「そんな頼りないか?」 「ちゃうよ」 「1回心臓止まってたぞ」 「らしいなぁ」 「あの橋、もう2度と渡れない」 「ごめん」 「夕陽が綺麗だったのに」 「うん、だからそこにしてん。思い出の地」 「……」 「……」 「……なぁ」 「ん?」 「……一緒じゃ駄目だったのか?」 「あは」 「…何だよ」 「そう言うと思ったから言わんって決めてた」 顔が見たくて引き剥がす。 えー、とか言ってたけど知らない。 やっぱり笑っていた。 「私の気持ち考えたか?青白い顔見た時の気持ちは?!何も聞かされずに突然病院から連絡が来た時は?!」 「うん、ごめん。分かっとる。全部、オレのエゴや」 「……2度と起きないと思った。そしたら、凄ぇ後悔した。最後に話したの、ツリーは緑か白どっちが好き?とか…そんな、そんなどうでも良いこと…また明日なー、って手を振る姿とか…一緒に見る気も、明日会う気も無かったくせに…」 嘘吐き、と足した声が震えた。 何も気付けなかったくせに、って自分の声が心で木霊する。
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