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「ひーちゃん」
ごめんね。
「ひーちゃんって」
まだ慣れてへんからこっち向いてよ。
最後は、仕方ないな、って折れてくれるのを知ってる。
「…絶対、不細工とか言うなよ」
「うん」
言うわけないのに。
向き合ったら、次々涙が溢れては落ちる。
俺を見下ろすのが悲しいんだね。
「ふふっ」
「…何だよ」
「んーん」
「どうせ不細工って思ってんだろ?」
「全然。ひーちゃんやなぁ、って」
嬉しい、愛しい。
あの日で最期のつもりだったのに。
また会えたことが何より嬉しかった。
思わずぎゅっと抱き付く。
ひーちゃんの顎を伝った涙が背中に落ちた。
「ごめんね」
絶対許してもらえないのは分かってるけど。
「言えよ」
「ごめん」
「そんな頼りないか?」
「ちゃうよ」
「1回心臓止まってたぞ」
「らしいなぁ」
「あの橋、もう2度と渡れない」
「ごめん」
「夕陽が綺麗だったのに」
「うん、だからそこにしてん。思い出の地」
「……」
「……」
「……なぁ」
「ん?」
「……一緒じゃ駄目だったのか?」
「あは」
「…何だよ」
「そう言うと思ったから言わんって決めてた」
力任せに引き剥がされた。
不満と悲しさと怒りが混ぜこぜの顔。
ずっと泣かせてるなぁ。
「私の気持ち考えたか?青白い顔見た時の気持ちは?!何も聞かされずに突然病院から連絡が来た時は?!」
「うん、ごめん。分かっとる。全部、オレのエゴや」
「……2度と起きないと思った。そしたら、凄ぇ後悔した。最後に話したの、ツリーは緑か白どっちが好き?とか…そんな、そんなどうでも良いこと…また明日なー、って手を振る姿とか…一緒に見る気も、明日会う気も無かったくせに…」
嘘吐き、と足された声が震えてた。
うん、ごめん。
ひーちゃんは何も悪くない。
ツリーの話したのも、また明日なー、って言ったのも、わざといつも通りにしたから。
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