よみがえり

律希

「ごめん」
「絶対に許さない」
「えぇよ」
「……」
「もう願い叶っとるから」
「願い？」

うん、と頷く。
真っ直ぐ見つめたひーちゃんは、困惑していた。

「もし、もう1度ひーちゃんに会えるなら。律希って呼んで欲しかってん」
「…そんなの」
「あ、でももう1個あったわ」

ヘラリ、笑う。

「ホントは笑って言って欲しかってんけどな」
「…無理だよ」
「やんなぁ」
「無理だ」
「えぇよ。会われへんと思ってたし。会えても絶対怒っとるし、愛想尽かされてると思っとった。だから、呼んでもらえただけで十分。ありがとぅな」

本音はヘラヘラ笑って隠す。
でも、やっぱり顔は見れなかった。
きっと、俺はまたひーちゃんを泣かせてる。

「…だって、好きだもん」

何とか背中を向けて、動き出す。

「え？」

思わず振り返った。
タイヤが土に擦れる音がする。
目が合ったひーちゃんは、もう泣いてなくて。
いつもの強い瞳で続けた。

「凄ぇ腹立ったし、ショックだったし、悲しかったけど。やっぱり好きだって思ったから」
「……」
「身勝手過ぎるって、勝手に決めるなって、張り倒してやろうと思ってた！なのに…顔見たら泣けてきちゃって」
「…うん」
「…クソやろう」
「うん」
「…2度と死ぬなよ」
「長生きは頑張るわ」
「その前に話せ」
「うーん、時と場合によるなぁ」
「却下」
「えぇ？！」
「言わずに死んだら、追いかけてやる」
「意味無いやん」
「だから言え」
「…努力します」
「ん」

前に回ったひーちゃんにぎゅっと抱きしめられた。
優しいひーちゃんの匂い。
俺、死ななくて本当に良かった。

「それにしても、大学生で、もん、って…」

抱き締められたまま、胸元でモゴモゴ言う。

「可愛くなくて悪かったな」
「いや、ツンデレのひーちゃんが言うたら、凄ぇ威力やったな、と」
「は、はぁ？！」

珍しく本音を隠さず言ったんだけど、驚いて照れたひーちゃんに叩かれた。

「痛い痛い、病み上がり優しくしてや！」
「よみがえりだろ！」

上手いこと言う！と笑いながら逃げた。
やっぱりまだ慣れなくて、すぐ追いつかれた。

「うわぁ～」

前に回り込まれたから、咄嗟に顔を庇う。
笑い声がして顔を上げると、ひーちゃんは後ろに回ってゆっくり押してくれた。

「……陽彩」
「えっ？」

ふざけずに真剣に呼ぶ。

「ありがとぅな」

感謝と謝罪と愛しさを込めた。

「………………キモっ」

沈黙の後、ぼそりと落ちてきたのは貶すセリフ。

えぇ～酷ない？！

振り向こうとしたら、スピードを上げられた。

うわっ！ひーちゃん、ひーちゃん！怖い怖い怖いって！

わざと大袈裟に騒ぎ立てる。
ひーちゃんがそうやって貶すのは、照れてる時って知ってるから。