化ける

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「ほら、化けるって言っただろう」  自慢たらしい藤森教授に末吉は苦笑いした。  二科美術展示会に特別に陳列されているのは藤森教授の生徒、自分の絵を黒く塗りつぶそうとしていた若者の絵だ。  あの後から、彼の絵は変わった。好評で今回の展示会の目玉だとまで言われるようになっている。 「ああいう才能があるのに、考えすぎる奴は世間を知ると変わるんだよ」  教授はたまに目をかけた生徒に衝撃を与えようとする。女性や病人まで使うので人間としてそれはどうかと思うが、結果が出るのが不思議だ。 「化けるといえば、お前に演技ができるとは思わなかったよ。他にも色々、衝撃を与える手段を用意していたのにお前の演技だけで決まったからな」  末吉は笑った。演技なんかじゃない。本心を言っただけだった。
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