第二話 猫と私

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私と妹は泣きながら喜んだ。 新汰はとっても優しかった。 妹は、ますます新汰の事が好きになった。 私も、すごく嬉しかった。 「楽しそうな所、悪いんだけど… 本題に入っても、いいだろうか?」 警官のおじさんが話しかけてきた。 「あっ、はい。  すみません…。」 「えっと、この血のついた服なんだけど… 誰の血なのかハッキリしてないから、  調べたいんだ。  お嬢さんは猫の血だと言っていたんだ  けど…その事を詳しく聞かせて  もらえるかな?」 「あっ、はい。  分かりました。  昨日、皆既日食があったじゃないですか?  その時に一瞬だけなんですけど、雷のような  眩しい光が見えて、私すごくそれが気になっ  てしまって、その光が消えた場所まで、行っ     てみたんですよ。  そうしたら、小さな公園にたどり着いて  その公園には、大きな木があったんですけど  木の枝が折れていて、その下を覗いたら  この服と一緒に猫が倒れてたんです。  猫が怪我をして苦しそうにしてたので、  急いで動物病院を探したんです。  私、慌ててたからその場にあった物を全部  拾って、病院まで走ったんですよ。  それで、その猫は今、病院にいます。  大した怪我じゃなかったみたいで、安心した   んですけど、飼い主がいるのか分からなく  て、飼い主がいない動物は保健所に連れて  行かれて、殺処分されるかもって言われた  んですよ。そんなの可哀想じゃないですか?  だから、飼い主が見つかるまで、私が  預かる事になってて。  今日、迎えに行く約束しているんです。」 私は昨日の出来事を全て、話した。 みんなは、私の説明に驚いていた。 警官のおじさんが話し始めた。 「皆既日食の時に、そんな雷みたいな光  あったかな?僕もパトロールをするために  その時間外に出ていたけど、見てないな… 何かの見間違いかも…。」 「俺も、気になって空をずっと見てたけど、  そんな光は見てないよ。」 「僕もです。」 「私も、見てない。それって見えたのお姉ちゃ    んだけって事?」 その場に居た皆んなは、口を揃えて光を見ていないと言った。 でも、私は確かにその光をはっきりと見て いた。 「えっ?皆んな見てないんですか?  あんなにハッキリ見えたのに?  私だけが見たって事ですか?」 私は首を傾げて、驚いていた。 すると新汰が質問して来た。 「ねぇ、その猫ってどんな猫?  何か特徴とかある?」 「あっ、はい。黒猫でした。  すごく、毛並みも綺麗で、  野良猫には見えなかったです。  あっ!そうだ!  一つ思いだした事があります。  その猫、廉太郎くんがいつも身につけている  ペンダントを首に着けてたんです。」 私が言うと、新汰とマネージャーさんが 顔を見合わせて、驚いていた。 「えっ?そのペンダントは今どこにあるの?」 「あっ、えっと…猫の首に着いてると思い  ます。」 「そのペンダントは、蓮の宝物なんだ。  亡くなったお父さんから貰った物みたいで、  一点物って聞いた事がある。 だから、それは絶対蓮の物だと思う。」 「えっ?そうなんですか?  じゃあ…廉太郎くんが、その猫に着けたって  事ですか?」 「多分…。でも、確証がないな…。  その猫に会わせてもらえるかな? 一緒に病院に着いて行ってもいいかな?」 新汰とマネージャーさんは、私の顔をじっと 見つめてきた。    
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