第一話 推しと猫

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「茉莉花、今日は暇だからもう店閉めるぞ。」 今日は土曜日なのに、何故か店にお客さんの姿がなかった。いつもなら閉店の夜九時まで お客さんが入り浸っているのに、おかしいなと 私は思った。 叔父さんは午後二時に店を閉めると言った。 「今日って何かあるんだっけ?」 「ほら、あれだろ!月と太陽だよ。  皆既日食だろ!俺はあれがみたいんだ!  だから、今日はもう終わりにするぞ!」 「あー!そっか!それで…。」 私は、納得していた。 そういえば朝から、ニュースでも取り上げられていたのを思い出した。 店の片付けを終わらせて、私は家に帰る準備をしていた。 「茉莉花、帰りはどうする?  車で送るぞ!」 「あっ、今日はまだ早いし、歩いて帰る  からいいよ。  歩きながら月も見たいからさ。」 私は叔父さんの車に乗らずに歩いて帰る 事にした。 今朝、お母さんとは送ってもらうと約束した けど、私は断ってしまった。 今日は歩きたい気分だったからだ。 店を出ると、私はすぐに月と太陽を探した。 するとまだ昼間のはずなのに、辺りが暗くなり 始めていた。 空を見上げて、私は驚いた。 「えっ?嘘!昼間なのにこんなふうになるの?  凄い!不思議!」 本当に月と太陽が重なるんだ。 私は不思議な気持ちになっていた。 しばらく、空を見上げていた。 その時だった。 突然、眩しい光が空を覆った。 まるで雷のような稲妻が走ったと思ったら、 物凄い速さで、地面に向かってその光が落ちて行ったのだ。 (えっ?な、な、何⁈何が起きてるの?) 一瞬の出来事だった。 私はそれが、何なのか気になって、 皆既日食どころではなくなってしまった。 そして、私はその光が落ちて行った方へ 走っていた。 とにかく、夢中で走っていた。 すると、小さな公園にたどり着いた。 「あれ?こんな所に公園あったんだ。  知らなかった。  あっ、木が折れてる。  ここに雷?堕ちたのかな?  ん?木の側に何か落ちてる…。」 私は木の近くまで、近づいてみた。 そこには、人の服が散らばっていた。 「えっ?何この服…。何でこんな所に服が あるの?靴もあるし…リュックまで?  えっ?嘘?ね、猫?怪我してる…。 どうしよう…。もしかして…さっきの  雷のせいかも…。」 木の側には、服と一緒に怪我をした黒猫が横たわっていたのだった。 その猫は微かに息をしていて、苦しそうに していた。 私は、とにかく病院へ連れて行こうと考えた。 だけど、動物病院の場所が分からなかった。 私は、慌てながらスマホを開いて、動物病院の場所を調べた。 そして、近くにあるのを見つけた。 私は、そこに合った服ごと猫を抱えて、 病院がある場所へと急いだ。
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