第一話 推しと猫

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病院へ着いて、私は慌てて駆け込んだ。 「あっ、あの…緊急なんです…。  予約とか何もしてないんですけど… この子、診てくれませんか?」 私が入った、その病院には、丁度患者さんが 一人も居なくて、すぐに診てもらう事が 出来た。 私は、少し安心して手当てが終わるのを 待っていた。 待っている間、私はある事に気がついた。 (あっ、慌ててたから、あそこにあった物 全部持って来ちゃった…。) 手には、猫の血がついた服と靴と黒いリュックを持っていた。 (どうしよう…これ…。誰のなんだろう?) 私は、服を見て思った。 (この服…何処かで見た事あるな…。 靴も…このリュックも…見覚えがある… どこで見たんだろう?) 私は、それらをじっと見つめて考えた。 そして、ある事に気がついて慌ててスマホを開いてみた。 「あっ!こ、これだ!」 私は、大声をあげた。 それは、なんとBLACK CATのメンバーの 廉太郎の私服にそっくりだったのだ。 SNSの写真と見比べて、私は確信していた。 (間違いない…。これ…廉太郎のと同じだ…。 でも、何で?誰かファンの子が置いて行った のかな? あっ、リュックの中身見てもいいかな?) 私は、リュックを確認する事にした。 リュックに手を差し伸べたその時だった。 突然、看護師さんに名前を呼ばれたのだ。 「迫田さん!診察室にお入り下さい。」 「あっ、はい。今行きます。」 私は急いで、診察室へ入った。 入るとすぐにベットがあって、手当てを終えた黒猫が寝ていた。 「手当ては無事終了しました。  幸い、深い傷ではなかったので、  もう、安心して大丈夫ですよ。」 「えっ?本当ですか?  良かった…。」 「でも、今日は麻酔をしているので、  安静にしていた方がいいと思います。  なので、今日はこちらでお預かりします  が、よろしいでしょうか?  明日、目が覚めたら迎えに来て頂けますか?  ご自宅はお近くですか?」 「あっ、あの…この子は…私が飼ってる  猫じゃないんですよ…。  さっき、公園で倒れてるのを見かけて… だから…他に飼い主がいるかもしれない  んですよ…。」 「えっ?そうなんですか?  それは、困りましたね…。 確かに、誰か飼い主さんがいるかも  しれないですね…。  これが、首に着いていたので。」 先生は、私にペンダントを見せてくれた。 私は、そのペンダントを見て驚いた。 「えっ?このペンダント!  嘘!何で?え〜!」 「えっ?どうかされましたか?」 「あっ、いえ、その…知り合いの持ってる  ペンダントにそっくりだったので… 大声出してしまって、すみません…。」 「そうなんですか?  では、その方に連絡はとれますか?」 「あっ、それは…ちょっと…。 連絡先は知らなくて…。」 そのペンダントの持ち主は、廉太郎だった。 私は、廉太郎が身に着けている物はいつもチェックしていた。 そのペンダントもその一つだった。 連絡先なんて、知ってる訳がない。 だって、彼は芸能人なのだから。
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