第一話 推しと猫

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「そうですか…。それは困りましたね…。 飼い主が見つからないとなると、  この子は保健所に送らなくてはならなく  なります。」 「えっ?そうしたらどうなるんですか?」 「飼い主が見つかればいいですが、  見つからなければ、殺処分される可能性  もあるんですよ…。」 「えっ?そうなんですか…。  こんなに、綺麗な子なのに?  それは、納得出来ません…。  じゃあ、私が飼います!  私、猫好きだし、私が飼い主なら  問題ないですよね?  親も説得します。  だから、保健所には渡さないで下さい!  お願いします!」 私は、病院の先生にお願いしてみた。 病院の先生は困った顔をしていた。 「うーん…。それは、どうだろう…。 じゃあ、とりあえず今日はお預かりするので  明日、親御さんを連れて来て頂けますか?  親御さんの許可を得て、改めて迎えに  来てくれるかな?」 「はい。わかりました。  必ず、説得してみせます!」 私は、先生に挨拶をして、病院を出て、 家へ急いで帰った。 家に帰って、すぐにお母さんに猫の 話をした。 すると、お母さんは私の必死のお願いに 了承してくれたのだった。 幸い、私が住んでいるマンションは、賃貸だったけど、ペットを飼ってもいい所だった。 私は、喜んで自分の部屋に入った。 そして、またある事に気がついた。 「あっ、そうだ!リュック!  中身確認してなかったんだ…」 私は、リュックを開けて中身を全て 出してみた。 リュックには、財布とスマホ、ノート二冊と筆記用具、それから手帳が入っていた。 私は、最初に財布を確認してみた。 その財布には、驚く物が入っていたのだ。 「えっ?うっ、嘘でしょ?  こっ、これって… え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 財布には、免許証が入っていた。 私はその免許証を見て、同様してしまった。 なんと、その免許証は廉太郎の免許証だった のだ…。 そして、次の日 事件は起きた。 「お姉ちゃん!お姉ちゃんってば!  大変!起きて!  早く!こっち来て!」 私は目を擦りながら、時計を確認した。 妹が、何やら騒いでいるようだった。 私は、寝ぼけながらフラフラとリビングへ 向かった。 「うーん。朝からうるさいなぁ…。 何?何かあったの?」 「ほら!これ!見てよ!」 妹は慌てた様子で、テレビを指差した。 妹に言われるがまま、私は寝ぼけながら テレビに目を向けた。 視界がぼやけて何も見えない…。 私は眼鏡をかけて、もう一度テレビを見た。 すると、何やらニュースが流れていて、騒がしく何かを言っていた。 「大変な事態が起きてしまいましたね…。 廉太郎さんの事務所は大騒ぎの様です。  一体、どこへ行ってしまったのでしょうか?  まるで、神隠しにでも遭われたような  状況でしょうか?」 私はテレビを見て、動揺した。 「えっ?なっ、何?行方不明⁈  誰が?」 「廉太郎だよ!廉太郎が行方不明になった  んだよ!  昨日の夕方くらいから、連絡が取れないみた  いで、シェアハウスにも帰って来てないし、  携帯にも出ないんだって…。  それで…捜索願い出されたって!  どのチャンネルもその話題で持ちきりだよ。  後、SNSでも情報提供の呼びかけがすごい  みたいだよ!」 私は訳が分からず、呆然と立ち尽くしていた。 突然の事態に、理解が出来ず ただボーっとテレビを見つめる事しか 出来なかった。 大好きな人が行方不明になるなんて… 想像もつかない。 これは現実なのかと私は困惑していた。      
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