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タヌキが残してくれたモノ
「店長、見てください!」
アルバイトの声に焼き鳥屋の老店長は、レジの方へと歩み寄った。アルバイトの青年の手には、青々とした葉っぱが一枚あった。そこからは白い煙が立ち上っていた。
「レジから煙が出てたので、中を見てみたんですよ。そしたら一万円札が葉っぱに変わっていったんです。俺、夢でもみてるんでしょうか!?」
慌ててふためいている青年の手元を覗き込んだ老店長は、突然笑い出した。
「化け銭とは縁起がええじゃないか」
「化け銭?」
「昔からある話でな、まるで葉っぱがお金に化けるっていう話さ。おおかた狸が化かしにきたんだろうさ」
「狸が化かす? そんな昔話みたいなこと……」
「これが起こるんだよなあ。そして化け銭があった店は、将来繁盛するそうだ」
老店長は、そういうとニヤリと笑った。
「狸は鼻が効くという。おおかた美味い店も、人様よりわかるんだろうさ。だからこんなものを残していく。全く、めでたいことじゃないか。ほれ、額にでもいれて飾っておこう」
釈然としない青年を尻目に老店長はにこやかに笑っていた。
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