腹は減るもの

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腹は減るもの

 タヌキだって腹は減る。  朝方から空を濡らした小雨も、日が暮れる頃にはおさまり、辺りは日の残り香が醸し出す、夕闇に包まれている。  東京は新橋駅。  仕事を終えたサラリーマンが、古びたレンガの駅舎を行き来している。新橋は丸の内や品川に近いビジネス街であり、昼夜問わず、背広姿の大人達が歩き回っている。  新橋はサラリーマンの街だ。  サラリーマンが多い、ということは飲食店も多いということだ。夜になれば赤提灯が明々と灯り、周囲には赤ら顔の人々が、二軒目、三軒目の飲み屋を探して彷徨い歩く。  遅くまで灯りが続く、新橋とはそんな街だった。  そんな新橋の駅舎の前には、一台の蒸気機関車が展示されている。  日本鉄道の発祥の地を、記念したモニュメント。その車輪と車輪の隙間に、俺は寝転がっていた。    そんなところに、人が入れるわけないだろうって?  そりゃそうだろ。俺は狸なんだから。
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