肉を喰らう

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肉を喰らう

「はい。モモ、ムネ、セセリです!」  長方形の皿の上に、それぞれ二本ずつ串が載っている。焼きたてだということは、まだほのかに湯気が出ている。  良い匂いだ。油の焦げる匂いには、独特の香ばしさがある。息を吹きかけ様しつつ、まずはモモを口にする。 「……うまい」  肉は柔らかく、とても食べやすい。噛み締めると濃厚な油が舌を伝う。塩で味付けしたシンプルな串だが、それがいい。肉本来の魅力を存分に堪能できる。  口の中がまだ熱いにも関わらず、さらにもう一口。  ところどころにある焦げを、噛むときにパリッと小気味よい音をたてる。中心の柔らかさとは異なる食感が、より味を引き立てていた。  ひとしきり堪能したあと、次にムネに手を伸ばす。  モモと比べて、サッパリとした味わいだ。しかし肉の旨みはしっかりと感じられる。こちらは塩ではなくタレで頼んだが、醤油ベースのタレは肉の風味と相性が良い。  噛み応えがありながら、上品さを持った舌触り。鶏肉の魅力を優雅に彩っていた。  そのままの勢いでセセリの串を掴む。  噛んだときに油が飛び出すその感覚は、モモに近い。しかし食感には独特の噛み応えの強さを感じられる。そして隠しきれない上品さがムネを思わせる。  しかしそれにしても、使っている肉が良いのだろう。噛み締めるごとに旨みが口の中に広がり、体いっぱいに心地良さが広がる。  とにかくいずれの品も上質だった。口の中の肉を飲み込むと俺は、店員を呼び止め次の串を頼む。
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