虫のいい話

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 彼女は自分の命が残り僅かになったところで、自宅療養に切り替え病院を出て行った。最後の瞬間は自宅で過ごしたいという彼女の希望だったらしい。病院を出ていく日、彼女は力ない笑みを精一杯作り、僕に向かって言った。 「もしわたしが死んじゃったらさ、セミになって会いに行くことにするね」  それが、人の姿をした彼女を見た最後だった。
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