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急に早く脈打ち、固唾を飲む。歩く彼女を目で追い、声をかけようかどうしようかと、迷う自分がいる。早く言わなければ、ゆきりんは行ってしまう。どうする。どうしたい。ドアハンドルに手をかけるも、なかなか動いてくれない。
吉見さんとの会話が脳裏をよぎった。すると、身体が自然と動きだした。
「ゆきりん!」
目を丸くして彼女は振り向いた。私に気付くと頬がふわっと緩んで「まりりん」と、私の名前を呼んだ。
私は山根たちと違う。ゆきりんを見た目で決めつけた自分を恥じた。調子いいかもしれないけど、彼女の中にいる私でありたい。
「車とめてたら、ゆきりんが見えたから」
「声かけてくれてありがとう。会えて嬉しい」
その時の彼女の笑顔に、当時のあどけなさが垣間見えた気がした。ゆきりんを仲間はずれにしようとしたことを、心の中だけで謝った。そう思っていたと知られたら、今後の友情にヒビが入りそうだったし、知らなければ何事もなく、昔と同じように仲良くできると思ったからだ。
「さっきスーパーで吉見さんに会ってさ。結婚してママになっててビックリしたよ。赤ちゃん三ヶ月だって。ちっちゃくてかわいかったぁ」
「えー、もうママなんだ。すごいね」
「今は『和田』さんなんだって」
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