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悪い人ではないだろうけど、そんなふうに聞かれて「嫌だ」なんて言えるわけもない。
「う、ん……大丈夫」
「良かったぁ」
二人は見つめ合って晴れやかな笑みを浮かべた。でも、どこか複雑だ。だって二人は……。
「付き合ってるん、だよね?」
率直に聞いた。二人とも互いに見合ったのち、ゆきりんが吹き出した。
「え、そんな噂あるの? ウケる。私たち職場の最寄駅が同じで、よく会うのよ。それで同窓会の話も二人でやろうって決めたんだから」
「一緒にいたところを誰かに見られて、そんな噂が広まったんだろうな」
ケラケラと笑うそんな二人の様子を見て、私も胸を撫で下ろした。杞憂に過ぎないことに振り回されるのはもうやめよう。
少し歩いて居酒屋に着いた。さすが金曜の夜だ。どこのテーブルも埋まっていて賑やかだ。
「とりあえず生三つ」
私の前にゆきりんが座る。ゆきりんの隣に坂井くんが座る。七年前にはこの三人で居酒屋なんて思いもよらなかった。
「まずは一週間お疲れ様でした! 乾杯!」
三つのジョッキが音を鳴らす。冷たいビールが喉で弾けてなんとも言えない爽快感だ。
「秦野、この前、吉見に会ったんだって?」
「そうなの! 吉見さんがママになってて、赤ちゃんめっちゃかわいくて」
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