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〈アナタハサルノコシカケネ。アタシハアミガサタケ。『アミ』ッテ呼バレテル〉
〈アタシハ、『ノノ子』〉
〈フフン。マダ子供ネ〉
ノノ子の気持ちが急降下するのが分かった
「ははは。アミ。いじめるな。思いがけないところで仲間に会えて、うれしいんだろう?。俺とアミは、12歳からの付き合いだ。もはや二十年になるかな。といってもアミたちの時間の流れからすればほんの一瞬のことだろうが。俺はアミを連れて歩いて、アミが降りたいと決めたところに降ろしてやるのさ。俺たちは、いわば、輸送艦だ」
少尉は、アミの顔をつるりと撫でた。
「我々の行先は南洋のジャングルだ。案外お前にあうかもしれんぞ」
〈イヤヨ。少尉ト私ハ同体ナノヨ。〉
「分かっている。俺とお前は一心同体だ」
少尉は煙草を出して火をつけた。それをアミの口元に持っていくと、アミは慣れた様子で吸った。
「ふう」
煙が、少尉の口から吐き出された。煙草の煙が部屋の中に充満して、ノノ子が顔をしかめてむせた。
〈マダマダ子供ネ〉
アミが笑った。煙草の煙だけではなかった。アミの親が育った森の香りが、たばこの煙とともに広がった。故郷の森と似た、懐かしい匂いだった
「俺は必ずアミとともに帰る。貴様も死ぬなよ。」
「はい」
〈少尉。ゼッタイ帰ロウネ。〉
「ああ」
少尉殿とアミは、顔を見合わせて微笑んだ。
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