帰郷

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〈イタ。イタンダヨ。ズット、ココニイタノ〉 ノノ子は迷い家の一部であったが、私と共生する中で私の要素をたくさん受け取っている。ノノ子と迷い家は別な個体になっていた。母のような存在である迷い家の死を、ノノ子は深く強く悲しんでいて、それを私も共有していた。 ここにいた、大きな迷い家。美しい、彼女。 ふと、足元を見ると、一粒のドングリが落ちていた。ピカピカに磨かれたようなつやを放っている。リュックの中で、もぞりと動く気配があった。 アミ? 干からびて動かなかったアミのかけらから、菌糸がわずかに伸びていた。 「このドングリが気に入ったのかい?」 私はリュックからアミのかけらを取り出して、ドングリと一緒に地面に埋めた。相性が良ければまた、アミも芽吹くことができるかもしれない。 アミを埋めた後、ノノ子に聞いた 「お前は、どうする? 気に入った木があれば、置いてやろう」 〈マダ、イッショニイタイ〉 「そうか。分かった」 私はノノ子に軽く触れてから、裏山を後にした。
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