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先輩が視えて会話ができるのは私以外いない。他の人達から変に思われないように小声で話す。
昇降口で靴から上履きに履き替えた時に「松沢か?」と声をかけられて声のする方に顔を向けるとそこには男性の担任、倉見(くらみ)先生が立っていた。
「おはよう、松沢」
「おはようございます、倉見先生」
すると、ずっと隣にいる先輩に『光桜の担任って倉見なんだな』なんて言われて思わず横を向いた。
「松沢、横を向いて何かあったのか?」
倉見先生に言われて咄嗟に言い返す。
「いえ、何にもありません」
「そうか」
先生の後ろをついて行くかのように階段を登って二年生の教室は二階にあり、三年生の教室は上の階の三階にある。
「先輩の教室は三階ですよ」
私は人差し指を上へ向けて呟いた。
『知ってる』
でも、先輩は三階に行こうとはしない。
「どうして、まだ、ついてくるの?」
『だって、不安、怖いって光桜の顔に出てるから』
(えっ……)
先輩に言われた私は自分の手で顔を触る。
先輩の言うとおりで不安で怖いと心から思ってるだけで顔にまで出てるなんて言われて気がついた。
『俺は自分の教室に行っても友達と話せないし、授業を受けたとしても黒板の文字をノートに書き込むことなんて出来ない』
(だから、先輩は私の隣にいてくれるの?)
『光桜が嫌だったら今から俺、塔屋にいるけど?』
「嫌じゃない。隣にいてほしい……」
『なら、教室に入るぞ』
私はコクリと頷き先輩の後ろに付いて教室へと入る。
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