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すると、クラスにいた生徒が一斉に光桜の方を見た。
「あの子、誰だっけ?」
「確か……転校生って倉見先生が話してたような」
クラスの人達からのコソコソ話が聞こえてきて光桜に不安が押し寄せる。
すると担任の倉見先生が教室に入ってきた。先生は私を見て「松沢の席は窓側の一番後ろの席」と言ったので私は席に座る。
机の下で微かに震える私の手を見た先輩は自らの手を机の上に差し伸べた。
『大丈夫だ、光桜。俺がいるから安心しろ』
震えている手をそっと透明な先輩の手の上に重ねる。直接、手には触れていないけれど、なぜか心が落ち着いていく。
「ありがとう、先輩」
私は外を眺めるかのように先輩の目を見て微笑んだ。
***
それから先輩と一緒に授業を受けていく。不登校の私は黒板に書かれているものをノートに写していくのがやっとだった。
誰にも視えない先輩に授業がある度に隣でわかりやすく教えてくれた。
今はお昼の時間で私と先輩は屋上の塔屋の上でお弁当を食べている。
屋上は思ったよりも静かで過ごしやすい。
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