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(春風が気持ちいいなら丘の桜のところへ行きたいなぁ)
なんて思いながらお母さんが朝ごはんを持ってきてくれた。
「はい、食べちゃって」
「……いただきます」
朝ごはんは梅干しのおにぎり、しそ昆布のおにぎり、卵スープ。
ゆっくりと朝ごはんを食べて時計を見たら既に三十分は経っていた。
「ごちそうさまでした」
すぐに洗面所へ行き歯を磨いて顔を洗う。髪は後ろでひとつ結び。
部屋に戻って久しぶりに制服を身に付ける。カバンを持ってそのまま部屋を出てリビングに行くと、お弁当、水筒がテーブルの上に置いてあった。
カバンの中に弁当と水筒を入れて玄関へと向かう途中にお母さんは洗濯機の前にいて私は足を止める。
「行ってきます」
「気おつけて、行ってらっしゃい」
靴を履いて家を出て歩いていると、頬を掠めるように春風が吹き抜ける。
久しぶりの登校で学校が近くなるにつれて緊張でお腹が痛くなってきた。
「やっぱり、帰ろうかな……」
下を向きながら歩く足を止めて立ち止まる。家へと引き返そうとしたと顔を上げたら校門のところに先輩がいた。
私がお腹を手に手を当てたまま先輩を見ると先輩も私に気がついて手を振る。
『おはよう、光桜』
学校の門をくぐると、先輩に挨拶をしようとしたら男性の教師に声をかけられた。
「……おはようございます」
小さい声で私は挨拶をして昇降口へと向かう。
そして、私の隣に先輩が浮いていると思ってよく足元を見たら透明でもきちんと歩いている。
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