二、卒業アルバム

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二、卒業アルバム

私は、本棚から高校の卒業アルバムを引き抜いて、椅子に座った。 アルバムを見るのは、何年ぶりだろう。 43年前の私たちのページ。ゆっくりと開いた。 楕円(だえん)の枠の中に18歳の私たちが、一人一人かしこまっている。 枠の下に書かれた名前を指でなぞる。『木花咲子(このはなさきこ)』今でも名字は変わっていない私。 写っている姿も今でも変わっていない。紺のブレザーが細い体をより細く見せている。太い黒縁の眼鏡に薄い唇。 変わったのは、当時三つ編みだったことと、今は(とし)をとったこと。 『水野美樹(みずのみき)』は、私とは対照的に健康的な体型だった。髪型は、(ちまた)では全盛期だった”聖子(せいこ)カット”。美樹は、担任の注意をものともせず撮影に臨んだ。いつも明るくたくましかった美樹。変わったのは、『水野』の姓だけかな……。 それからもう一人『寒川京子(さんがわきょうこ)』。 京子は、美樹より更に肉感的だった。丸顔で日本人形のようなおかっぱがよく似合っていた。 私、美樹、京子はいわゆる仲良し三人グループで、一番早く結婚したのは京子だった。 そして、あの窓ガラスについた『美樹の手形』事件のきっかけとなったのも京子だった。
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