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三、下校のひと時
記憶も43年前に戻る……。
私たち仲良し三人組が、学校からの下校途中だった。
ちょっとした山の中腹に校舎があるので、登校は文字通り登り、下校は道を下る。
周りは農家で、実に穏やかな環境の学び舎だった。道を下りきった所に国鉄(今のJR)の駅がある。大半の生徒はそこから汽車(当時はディーゼル機関車だった)で街の駅との間を通っていた。
下り道の中ほどだった。私たちの後方から、男子が三人スタスタと歩いてきた。
「おう、水野たちも帰りか、一緒に行こうぜ」
男子グループの八村がにこやかに言った。ちょうど10月の中間試験が終わった日だったので、彼らも解放感から気軽に誘ってくれたのだろう。
高校三年間で初めてだった。グループ同士とはいえ男子と下校するなんて。
女子三人、男子三人なので自然とペアが三組できて道路の右端を歩いた。
先頭は、水野美樹と声を掛けてきた八村陽介。
その後ろに寒川京子と津田孝則という男子が続く。
最後尾は、私と佐々木航。爽やかなスポーツマンタイプの男子だった。
最後尾の私は、全員の様子が見て取れる位置にいた。隣にいる佐々木と話すというよりは、美樹や京子がどう行動するか、興味深く観察した。
美樹は、『八村君、八村君』と積極的に、八村に話しかけている。八村も明るいタイプのようで、臆することなく楽しそうに話していた。美樹の顔が紅潮している。八村に気があるのだろうか。
それに対して、京子と津田のペアは、逆だった。津田が京子に訥々とだが話しかけている。京子は、時々相づちをしているが、話題を広げようという気はないようにみえる。京子から声を発することはないようだ。
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