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四、私と佐々木
「木花、お前ら三人仲がいいな。いつも一緒にいるよな」
佐々木が、話しかけてきた。
「え、ああ、うん。1年のときから同じクラスだったから」
一応答えたが、佐々木は何が聞きたかったんだ……。
「木花って、三人の中では長老みたいだよな」
「何? チョウロウって……」
「水野と寒川と木花がいると、いつもお前が後ろを歩いて二人を見ているし、話しているときも二人が話し終わってから、何かまとめてる感じなんだよな」
「そ、そうなんだ」
自分では意識してはいなかった。佐々木からそう言われて自分の行動が思い当たる。
こんなふうに佐々木と話したのは初めてなのに、佐々木は私のこと見ていたんだ……。
そう思いつつ、隣を歩く佐々木に聞いてみた。
「それって、肯定的な意味? 否定的な意味?」
「何だよそれ、いい意味だよ。木花って落ち着いててさ、頭いいし」
褒めてくれているようだ。私はどう返答していいかわからずただ、
「あ、ありがとう」
とだけ答えた。
「おう」
そう言って佐々木は、ほほ笑んでいる。
男子など意識したことはなかった。
そんな男子が、私を評価する言葉を初めて聞いたので、少しドキドキする恥ずかしさを感じた。
気の利いた会話はできないけど、とりあえずほほ笑みは返そう。
佐々木を見るとちょうど目と目が合った。私がほほ笑むと佐々木は、下を向いてしまった。
何か言わなければと思ったときだった、ふと視線を感じた。
前を見ると京子が振り返ってこちらを見ている。その顔は穏やかではない。怒っているようには見えないが、隣でしゃべりかけている津田を無視している。
そんな京子と私を、最前列の美樹が、八村と話しつつチラチラとみていた。
駅に着いて、男子グループ、女子グループは分かれる。
列車内で京子は、ほとんどしゃべらなかった。自然と私と美樹も口をつぐんでいた。
この夜、私の二階の部屋に幽霊がでた。
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