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五、お化け事件
山手にある私の家を、美樹や京子は『西洋屋敷』と呼んだ。屋敷とは大げさでそれほど大きな家ではない。バルコニーや吹き抜け、出窓があるような今ではよくある西洋風の住宅だ。父は他界していたため、住んでいるのは私と母と中学生の弟の三人だった。
午後10時、月のない夜だった。
母は、早寝だ。すでに部屋の明りが消えていた。
弟はリビングのソファーで寝そべってマンガ雑誌を読んでいる。
入浴を終えた私は、二階の部屋で受験勉強をする。
ドアを開け天井灯のスイッチを押した。オレンジ色を帯びた光が部屋を包む。
ベッドに座り脱力すると下校時のことがよみがえってきた。
佐々木君……。何であんなことを言ったのかな。私をいつも見ていたの?
でも何で私……。
気分が高揚して来たときだった。
部屋の明りが消えた。
「停電?」
窓から外を見る。近くの家や街灯は明るい。停電ではないようだ。
他の部屋を確認しようとドアノブに手を書かけたとき、背後の窓からカタカタカタという耳慣れない音。
「何?」
思わず声を出して振り向いた。呼吸が止まった。
窓からこちらをのぞく『顔』。
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