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七、お化けの正体
「あはははは、美樹でしょ。脅かしてごめんね」
下を向いてはしごにしがみついている美樹に声を掛ける。
「脅かしに来たのは、私なんですけど……」
美樹が顔を上げて涙目でつぶやいた。よく見ると、はしごを立てかけてのぞいたようだ。下ではしごを支えているのは京子だった。手には懐中電灯を持っている。それで、下から照らして顔を浮かび上がらせていたようだ。手の込んだ悪戯だ。
私は、ふと気づいた。
このはしごは?
美樹か京子が持って来たの?
いや違う。よく見るとそのはしごは私の家のはしごだ。
さっき家の明りが消えたのは誰のしわざ?
美樹はお化け役だ。京子ははしごを支え、懐中電灯で美樹を照らす役。
第三の犯人がいるはず。はしごを用意して、タイミングを見て家のブレイカーを落とす。つまり真っ暗にする役目をするものがいたはずだ。
「ああ! 弟だ! 寛治だ」
どう考えても弟しかいない。家のはしごを用意して、ブレーカーまで落とすのは。
数分後、私の部屋に美樹、京子そして弟の木花寛治がベッドに並んで座っていた。
私は、手を腰に当てて彼らの前を行ったり来たりしている。
しばらくすると美樹が一言。
「ごめん……咲子……」
続いて京子。
「ごめんなさい……」
「寛治は、何か言うことがないの?」
私は、少しすごみをきかせて言った。
「あ、あの、ごめんね……姉ちゃん」
寛治は、両手を握って膝の上にのせている。彼なりの反省のポーズだな。
私は、椅子を彼らの前に置いて座り、腕を組んで言った。
「さて、これは何の悪戯? しかも、寛治まで一緒になって」
「それは、私から言うね。これはね、ちょっとした実験なの」
お化けメイクで青白い顔の美樹が口火を切る。
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