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秘書である結人さんならタイムスケジュールは慣れているはず。そんな彼に想定外の出来事ばかり起こす私。振り返ってみれば出会いからしてハプニングだった。
「責任?」
「えぇ、遥さんには私の時計になって頂きます。懐中時計が壊れてしまったところで新しいのを探していました。どうか、共に時を刻んでくれるパートナーになって下さい」
「……急展開で正直戸惑います」
「恋に落ちるのに時間など関係ありません。大事なのは想いを通じあわせてからで、その辺りの計画は緻密に立てていますのでご安心を。遥さん、逃がしませんよ?」
そっと抱き寄せられる。身体を委ねてしまえば途端に怖くなくなり、手を回す。
「好きです、結人さん」
「はい、私もです。遥さんが好きです。この出逢いに感謝しています」
祈る口振りに胸が熱くなる。もう1段階強く抱き締めたら、くくっと笑われてしまう。
「ここではあまり大胆な行為は出来ませんので、続きは部屋に帰ったら致しましょう」
「わ、私はそういう意味じゃなくて……」
青味がかる瞳が狼狽える私を捉え、細められた。微笑みで好意を伝えられて文句が口の中で潰れる。
ひとまず彼から離れ、手を繋ごうと仕草で誘う。すると結人さんはすぐ要求に応じ、旋毛へキスをしてきた。
「……惜しいです、貴女の身長がもう少し高ければ口付け出来たのに」
「な、なっ」
「あぁ、遥さん、見て下さい。こんなところに良いアイテムが売っていますね」
今気付いたとばかり、ショーウィンドウに飾られたハイヒールを指差す。
「チーズとワイン、それからこちらも買いましょう。この会社の靴はお勧めですよ」
結人さんはウィンクした。
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