「会いたい人」と「会いたくない人」

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 人はよく、「そんな人間は、社会的地位を築いているはずがない」と言って慰めてくれる。けれど、会ってみないと分からないのもこの世の中だ。  私には、こんな場面が想像できる。 「おお、北原じゃねえか」  通りを歩いていると、ある男に声をかけられたとする。  お互いに40歳だ。風貌が変わり、すぐには思い出せないが、高校生の時、集団で私を虐めていた男たちの一人だと分かる。 「俺のこと、憶えているか?」男は一方的にしゃべる。  忘れるはずもない。松山という男だ。  この男、私をイジメていたことを忘れているのか?  そう思っていても、相手は楽しそうに話し続ける。あくまでも想像の中だ。 「お前、出島のこと、知っているか?」松山はそう切り出す。  出島と言うのは集団で虐めていた男たちの一人だ。  私が「知らない」と返すと、 「出島は、死んだよ。まだ若いのに・・」松山はそう言って、「出島は若い頃、素行が悪くて、誰か弱い人間を見つけると、よくイジメていたからな」と続ける。  自分の行いはどこかに置いてきたように忘れている。  そして松山は、 「ひょっとしたら天罰が下ったんじゃねえのか」と断定するように言って笑う。  その天罰とやらは、この男には下っていない。
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