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わからないと、散々思っていた変な気持ちが、だんだんと縁取られていく。
どうして、の答えは、いつからここにあったのだろう。もしかしたら隠れていただけで、実は随分と前からそこにあったのかもしれない。
わからないけれど。でも、確かにここにある。
拒みたい、と。離れたい、と。
少しも思わないのは、どうしてか。その答えはきっと、この変な気持ちと同義なのだと思う。
「聖梨」
「、なに」
「ずるいな、お前」
「……」
「でももう、いいわ、うん」
「いいって……」
ぬくもりが、離れていく。それでも、ふたりのあいだに流れる空気は温かいと思った。
「1個聞いていい?」
「……なに」
「いま好きって言ったら、お前、なんて答える?」
まだ確実なことは言わない和泉は、きっと私がどんな反応をするのかを楽しんでいるのだと思う。
むかつく、けど、私だってもうそれでいい。
「…………私のこともう興味ないって、言った」
「そうだっけ」
「とぼけないで」
「だって、普通にむかついたんだもん」
「う……」
「こっちの気も知らないで。だから冷たくしたらお前がどうなるのか見てみたかった」
言葉とは反対に、瞳の中に足されているのは甘さだ。
「ああしたの、正解だったってことでいい?」
そう言われて、やっぱりむかつく。でも、そうしてくれなければ、和泉の言う通り、私はきっと何にも気がつけなかったのだと思う。
こいつの作戦にハマってしまったようで癪だけれど。だけど、それでいいと思っている自分がいる。
「……でもさっき、彼女ほしいって言ってた」
「あー、ね。それはほしい。だから」
「……なに」
「聖梨がなって」
縁取られた気持ちが、熱を帯びた。
それは遠回しの、2回目の、あれなのだろうか。
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