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「それは、全部切れてから言おうと思ったら、その前に振られた」
「え……それは、ごめん」
「べつにお前が謝ることじゃないだろ。てか、誰から聞いたの」
「えっと…………実結ちゃん」
「まぁ、だよな」
ちょっと申し訳なかったなと思うのと、実結ちゃんと最後に話をした時のことを思い出す。あの日実結ちゃんに教えてもらわなければ、私はずっと和泉のことを勘違いをしたままだったかもしれない。
華恵にもそうだし、実結ちゃんにもすごく感謝するべきなのだ。そんなことを言ったら、実結ちゃんはものすごく嫌な顔をしそうだけれど。
「……その、そんなに深くは聞かないけどさ」
「うん」
「実結ちゃん、大丈夫だったの……？」
「大丈夫って？」
「だって……あんたのこと、好きだったじゃん」
「大丈夫。ちゃんと、話してきたから」
それを聞いてほっとする。実結ちゃんが良い子だってことはもうじゅうぶん知っていて、和泉はそれを私なんかよりもわかっているから。和泉の〝大丈夫〟は、なんだか信用できた。
ちゃんと話し合えたのなら、もう私から言うことは何も無い。
「で、どーすんの」
「え、何が」
「鈍すぎてうざい」
「は、はぁ？」
「お前が俺のこと好きなら、付き合いたいんですけど」
実結ちゃんのことで安心していれば急にそうストレートに言ってくるものだから、普通に胸が鳴る。もう、何度目だろうか。
「あ……それは…………えっと、」
「お前、俺にはなんでも言えるんじゃねぇのかよ」
「、あのねぇ、全部は無理に決まってんでしょ」
文句や悪口とは違いすぎる。なんでもっていうのは、訂正しておかなければ。
「まぁ、お前、わかんないんだもんな」
「……」
「ここまで来ても、ちゃんとわかんないんだよな」
だけど、私を見る瞳が甘ったるく緩んだから。ちゃんと見つめ返す。
むかつく男のはずなのに。顔だけのクソ男だったはずなのに。
抱いていた変な気持ちには、きちんと名前がついた。
私はきっと、こいつのことが――
「……あの」
「うん」
「その…………」
「うん」
ずるいな、と思う。うざいとか言ってたのが嘘みたいに、やさしい顔を向けてくるから。本当に私のことを好きでいてくれているのだと、その表情が教えてくれる。
「いずみ」
「ん」
「…………あんたのこと、」
「うん」
「……好きになった、みたい」
胸があつい。言葉にすれば、更に甘さが増した気がした。
「……なぁ」
「な、によ」
「やっぱ、襲っていい？」
「は……！？」
いつからとか、どうしてとか。きっかけも理由も上手く説明できないけれど。
私は、和泉 雪斗という男に、おちてしまったのだ。
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