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「和泉、聖梨のことよろしく〜」
「お前、手ぇ出すなよ?」
「はは〜ないない、あのふたりはない」
二次会の不参加者は、俺と聖梨だけで。元クラスメイトたちに見送られて、背中にぬくもりを感じながら歩き始めた。
時々背中のほうから、「んん、」と声が漏れるのが聞こえる。こいつが潰れて寝ている姿は初めて見る。
へぇ、こうなるんだ。だったら俺のいない飲み会では、こんなふうになるまで飲まないでほしい。たぶん、普通に誰かに持って帰られるから。
……って、俺が言えることではないけれど。
酔っ払った女や、酔ったフリをする女。そういう飲み会に参加した時は、最後は毎回ほとんどホテルやら家やらに連れ込んでいた。
そして、その度に思った。聖梨が知らないところでこうなってたら嫌だなって。
「なぁ、聖梨」
「……」
「聖梨」
「……」
「どうしたら、嫌いから好きになるの」
聖梨が聞いていないことをいいことに、つい本音がこぼれる。だけど言い終わってから気がつく。相当きもいなって。俺も大概、酔ってんのかも。
こいつは馬鹿だ。だって、篠原に会いたかったんじゃねぇのかよ。なのに篠原が来る前に潰れて、こんな姿晒して。しかも最後は俺におぶられて。
目が覚めて意識がはっきりした時、こいつ、発狂すんじゃね?
こわ。だけどそれを嫌だとは思わない自分も、まぁ怖い。
なんで俺、ずっとこいつのこと好きなんだろう。
そんなことを思いながら、タクシーを捕まえるために大通りに出た。
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