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そう言い聞かせて、聖梨の着ているニットをゆっくりと捲る。ここで目を覚まされたらころされるどころじゃ済まないと思うので、慎重に丁寧に、くそ神経を使って脱がせた。
露になった肌を見て、正直くそほど触りたくなった。これは男なら仕方ない、生理的現象。だけど今は人助け中で、そんな思考は早急に消し去らなければならない。
それでも視界には、ほとんど下着姿の聖梨が。あー、まじでこいつ、むかつく。これで手が出せないとかほんとクソだ、とかいうクソみたいなことを思いながら黙々と着替えさせる。
しかもわりと、可愛い系のそれだ。イメージ的に黒とか紺とか、そういうのが好みなのだと思っていたのに。今日がたまたまそうなのかはわからないけれど、淡い色のちょっとレースが付いているやつで。
セクシー系のいかにもってやつよりも、断然こっち派の俺には、それはもう、あれなわけで。
「……まじで、うぜぇ」
すやすやと気持ちよさそうに寝ているこいつに、俺のこの悶々とした気持ちなんて一生わかるはずがない。それがかなりむかつく。
から。
「お前のせいな」
額にそっと、口付ける。唇に落とすものなら、その瞬間理性が吹っ飛びそうだったので、あえてそうした。
……これでも、普通にギリギリだけど。
「クソ女、おやすみ」
それと今日、泊まることは許してほしい。さすがに疲れ果てているのもそうだけれど。
もう少しだけ、この寝顔を見ていたい。
なんて、絶対こいつには言えないけれど。
聖梨の顔を見ているうちに、気がつけば俺も夢の中に落ちていて。内容は覚えていないけれど、なんか良い夢だった気がするということだけは覚えていた。
翌朝目が覚めたこいつの顔面が怖かったなんてことは、言うまでもない。
( end )
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